2016年4月19日火曜日

【解説】ラヴソング第ニ話を吃音当事者が解説

第一話の解説はコチラ
http://stutteringperson.blogspot.jp/2016/04/blog-post_14.html


ラヴソング #2「7秒の勇気で世界が変わる」

1.冒頭の病院で神代が老女と話すシーン
これはかなり時間を割いていますね。
吃音に関係があるのか?
神代の過去の人間関係への暗示なのか?
どっちでしょうか?両方でしょうか?

別の人生があったのかもしれない…という―。

2.ライヴハウスSにて古い仲間達と飲んでいるシーン
ここでは笹が「原石がいないかな」とボヤキます。
それを聞いていた夏希が「さくらちゃん良いんじゃない」と声をかけます。

ライブハウスでの乱闘シーン。
エンドウさんの歌「この クソみてえな 世界を 俺たちが変えてやるぜ」

増村「そんな簡単に救えねーんだよ。今日も俺は救えなかった。俺だって救いてーよ」

この歌詞が意味する所。乱闘になるシーン。
これは吃音者業界の派閥抗争を暗示しているのかもしれません。
吃音者は2005年4月より発達障害者支援法に定義される障害になりました。
それ以前は重度の吃音者のみが身体障害者の音声言語咀嚼障害4級を取得できた数少ない事例もありました。

吃音は障害者だ。
吃音は障害者じゃない。
吃音で社会保障(障害者手帳取得)など利用することは恥である。
吃音があっても、上手く社会に溶け込んでいるから吃音が発達障害だと周知徹底してほしくない。
吃音があって困っている。不登校や引きこもりニートになっている。本当は勉強したかった、進学したかった、社会で働きたかった。でも頑張っても無理だった。障害者手帳など取得しちゃいけないの?

こんな派閥抗争があり、2013年に北海道で吃音看護師が自殺しています。
乱闘シーンと世界を俺たちが変えてやるぜの意味は吃音者業界を表現しているのかもしれません。

【必読】はじめて吃音を知った人へ。吃音と関わる上で絶対に知っておくべきこと。大切な吃音ガイドライン
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2015/11/blog-post.html

吃音(きつおん・どもり)とは何か?どのような障害なのか?
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2015/11/blog-post_18.html

2013年、北海道で吃音看護師が自殺した。だが、本当は自殺を避けられたのである
http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2015/11/2013.html


◆エンドウさん詳細
「GEEKS」のGt&Voその名もエンドウ.さんです。詳しくはGEEKSの公式サイトとかWikipediaを御覧下さい。高貴に動きまわるエンドウ.さんのありがたいお姿はこちらから。
https://twitter.com/endo_jp


3.空一の家にさくらが訪問しているシーン (ついでにギターも取り戻しつつ)
真美とさくらの喧嘩について空一がいろいろ突っ込むシーンです。
いつもなら喧嘩して解決していたのに、妊娠しているしなと空一が返答します。
そしてギターを取り戻します!!!

広島弁すごいです。

4.自動車整備工場で短時間休憩?のシーン
さくらの職場で休み時間と思われるチャイムが鳴ります。
仕事を一旦終えたさくらは、神代先生はいないかなぁ―と思いつつ医務室を訪ねます。
しかし、なぁーんだいないか…と思いきや背中側から神代が登場。びっくりしています。
神代は最近調子はどうですか?と優しく話しかけています。


5.屋上で煙草を吸うシーン
さくらが煙草を吸う理由が判明しましたね。
喫煙すると吃音が治るというのを信じていたようです。ただ、「喫煙で吃音が治る」というのは私は聞いたことがありません。煙草を吸うとリラックスできたり、落ち着くことによって、吃音になりにくくなるのではという話は聞いたことがあります。

私の場合は喫煙と関係ありませんが、卒業論文の発表はお酒を飲んで軽く酔った状態で発表した記憶があります。このようなことは吃音者ごとそれぞれあるかもしれませn。


6.仕事終わりの更衣室にて
同僚の女子職員が恋話などをしている。
さくらは、いつもの通り『とびっきりの笑顔で対応』している。
ロッカーの扉を閉めてとびっきりの笑顔で手を振りなら更衣室を出て行くところは、他の職員達が見ていようが見ていなかろうが、「挨拶はしたよ」って意味なのかもしれない。このようなところは吃音当時者目線だとあるあるネタすぎて辛い。
本当なら「お先に失礼しまーす」なんて言いたいところである。

さて、更衣室内では女子トークに花が咲いており、帰宅しようとしたさくらがその足を止める。
本当なら「私もその話に混ざりたい」のが本音だろう。吃音当事者も例えば、学校や職場で「ねーねー、昨日のドラマさ、ラヴソングさ見た?」、「見た見た!」なんて会話があれば本当は参加したいでしょうなと思ったところである。吃音者はドラマも見ていて、ストーリーも全部理解していたとしても、吃音で吃るから、会話に参加しない。または見忘れたフリをして相槌をうつだけの場合もある。

それでも、この職場の職員さん一同は、さくらのことを「モグ」と読んで受け入れているので、環境としては良いのかもしれない。滝川工場長は別です。

7.真美が結婚するため荷物処分をするシーン さくらからメッセージが送られてくる
さくら「結婚準備は順調?」
さくら「今夜、ちょっとデートっぽいやつ行ってくる!」

このデートっぽいやつというテキストを読んだときの真美の表情がちょっと心配です。
結婚準備は順調?のときの嬉しさの表情と大きく異なります。

真美のさくらとの長い人間関係があります。
おそらく、この手の、さくらがウキウキしたり、異性に惹かれる場合。
さくらが痛い目にあうことが多かったのかもしれません。
その後始末は真美がしていたのかもしれません。
それが影響して真美は不穏な表情になったのかもしれません。
真美はさくらと親友でありながら、お姉さんでもあります。
もしかしたら「依存関係」になっている可能性も?

さくらは仮定の話ですが、とても優しくしてくれるとわかった人には懐いてしまう人なのかもしれません。それを真美は知っているのかもしれません。


8.電車内のシーン
電車内のシーンは、神代が押し出されてさくらに接触しそうになりますが。
そこは神代ということでさくらに影響しないようにドアに手をついて、他人からの体重をうまくさばきます。それを見ているさくらは鼻の下が見事に伸びています。

その後、さくらが空腹でお腹の音が鳴ってしまいますが。それも神代は「今のは僕でーす」と的確に処理をしていきます。この神代のとった行動にさくらは大きく心境が変化しているかもしれません。

9.立ち食いそば屋のシーン
吃音者が人生で必ず体験するシーンです。
この場面も吃音者の苦しみが再現されていますね。
「私も同じの」というのはとてもよくある困り事です。
本当は食べたいものがありました。
吃音者はこのようなことはよくあります。
わざわざ食券制の飲食店を選ぶ場合もあります。
インターネットで注文できること、予約できることがあればそっちを利用する場合もあります。
食事以外にも自分が購入する商品や自動車、働く会社も、発話しやすいかどうか?で選択する場合もあります。

背景で他のお客さんが「ごちそうさん」と言って退店するときも、実は吃音当事者は羨ましいなと思います。

お蕎麦を食べながら神代は、さくらを褒めますね。
世界が変わるかもしれない―。と。

吃音当事者の経験ですが日本社会では「7秒すら吃ることを許さない」という人や企業団体もあります。『お前の、その、こここここここここここって言っている時間もったいないんだけど。毎日毎日それで、一年間でどれだけ時間がムダになっていると思っているの!!』と怒る人もいます。もっと寛容な社会になってほしいと思います。

10.夏希のクリニックにて
さくらの言いたい言葉を夏希が紙にメモさせますね。
そしてそれを歌に歌います。

しかし、吃音者的に要チェックポイントは「CALMSモデルの図」です。
背景のホワイトボードに「吃音者の悩みの多因子モデル」と書かれているものです。

https://www.google.co.jp/search?q=CALMS%E3%83%A2%E3%83%87%E3%83%AB%E3%81%AE%E5%9B%B3&source=lnms&tbm=isch&sa=X&ved=0ahUKEwjn4cvklpjMAhWBK6YKHWMpCt8Q_AUIBygB&biw=1366&bih=667


11.夏希と神代の演奏で歌うシーン
親友の結婚式でスピーチをしたい。
人前に立つことに慣れるためにバンドとして歌ってみたらどう?と提案してきます。
神代も巻き込んでいく夏希ですが。いったいどうなるでしょうか。

12.バスから降りて、衝動的にギターを教えてほしいと体当たりまでしてしまうシーン
このシーンを見て思ったのですが。
さくらは吃音以外の発達障害があるのではないかと思います。
とくにこの衝動性の部分がそのように見えてしまいました。
さくらは吃音の他にADHDも持っているのかもしれないと感じました。
さくらは今すぐ!!神代先生に話しかけないと!!今じゃないとダメ!!という思考をしたのです。

逆パターンなのですが、ADHDの人に吃音がある人もいますよね。
吃音が発達障害者支援法に定義されているのは、自閉症スペクトラムやADHDやLDやチックなどと併発症している場合があることが報告されているのも1つの要因なのかもしれません。

結局、神代はさくらのお願いを断ります。
さくらも、「結局、神代はこんな奴か!!」と裏切られた気分になっているかもしれません。

13.自動車整備工場のシーン
空一からのメッセージにイラつくさくら。
神代から見放されたと思ったのかもしれません。


14.自宅に帰ったとさくら ストリートファイター4をプレイしている真美
2人はストリートファイターをプレイしながら、最近の色々な出来事を話し合っています。
なんだかんだで真美とさくらはこうやっていつもお互いのことを理解しあっているのかもしれません。
ちなみに、さくらが使用しているキャラクターは春日野さくら(カスガノサクラ)です。


15.真美が倒れるシーン 救急車を呼ぶことができないさくら
緊急電話を、緊急通報をすることができない吃音者の苦しみをこのシーンでは描いています。
このシーンについては吃音者によって変化するかもしれません。
とても興奮状態にある吃音者は、例えば怒っているときなど、吃音者は逆にスラスラと懸河の弁で対応する人もいます。さくらの場合はそうではなく、緊急通報のときも、ひどく吃ってしまう設定のようです。

さて、この緊急通報ですが、吃音者からするととても困るものです。たとえば目の前で交通事故が起こっても通報しないかもしれません。貴重な目撃者だったとしても、吃ることが嫌なので名乗りでない可能性もあります。緊急通報以外にも、警察官に職務質問をされた際に吃ってしまうことが原因となり警察官からとても不審に思われ違法薬物を使用しているのではないか?と疑われる事例もあるようです。


16.7秒の勇気はインチキだと病院の待合室で神代に話すシーン
私は何の役にもたてないと悩みを神代に打ち明ける。
いままでのシーンで前向きになっていくさくらが描かれていました。
が、真美のために救急車を呼べずに神代に助けてもらったところで、またさくらの心に大きな吃音という問題がのしかかります。

17.ギターを持ったさくらが、ギターを弾きながら叫ぶシーン
エンドウさんのライブと重なりながら、さくらの叫び声が交互に映し出されます。
さくらの自分自身に怒っているシーンだと思います。
吃音のせいで、大きな失敗をしてしまった。吃音のせいでどうしようもない状況になってしまった。
そのどうしようもない感情を爆発させているのだと思いました。

18.自動車整備工場で神代がさうらに話かけるシーン
神代は臨床心理士的な視点から、自動車整備をしている車体の下から見える、人間の足、靴をみてどんな人なのか?と説明をはじめます。革靴は滝川工場長で、便所サンダルはおしゃれな女の子だったということです。

この会話から、さくらの靴は「すごく頑丈そう。強くて丈夫で実はボロボロ、それでも傷ついても傷ついても、生きていく強さを持っている」というようにさくらに話しかけます。やはり臨床心理士だけあって会話の広げ方が上手です。あまり掘り下げずに。神代は「じゃあ俺のは?」とさくらに質問します。

この後、さくらは神代の靴をみて、神代への評価というか悪口を話し始めます。
いつもより吃っていません。実はこれも吃音者あるあるです。
全ての吃音者が当てはまるわけではありませんが、吃音者は怒っているときや、悪口をいう時はいつもより滑らかに発話ができる人がいます。


もう一度 7秒の勇気を信じてみないか?
ここまで上手くコミュニケーションをできて、さくらをやる気にさせる神代はすごいと思います。


19.次回予告で転移の話??
次回予告で、精神医療業界でよく話題になる、医師など専門職と患者が恋愛関係になってしまう話が少しでていますね。

日テレで過去に放送されたドクター倫太郎でも恋愛と転移の話が出ています。
こんな記事がありました。
<「Dr.倫太郎」は治療倫理より愛が勝つ?>堺雅人・精神分析家は蒼井優・患者との一線を越えるか
高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事/社会臨床学会会員]
http://news.mynavi.jp/news/2015/06/12/193/





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