2016年4月19日火曜日

吃音当事者がハフィントンポスト社会面でラヴソングを紹介

2016年4月19日
投稿日: 2016年04月18日 08時46分 JST 更新: 2016年04月18日 08時46分 JST

ライター&エディターの小口貴宏氏がフジテレビ月9ドラマ「ラヴソング」の記事をハフィントンポスト社会面に投稿した。内容は下記の通り。

著者も吃音当事者であり、ドラマの演技はとてもリアルであると評価している。
吃音がドラマとして取り上げられることによるメリットの一方で、吃音障害であることを上手く隠して社会で生活している人へのデメリットがあるのではないか?とも懸念を表明している。





◆投稿されたハフィントンポスト社会面の記事
http://www.huffingtonpost.jp/takahiro-koguchi/lovesong-stuttering_b_9698484.html


フジテレビ・月9で新ドラマ『ラヴソング』が始まった。第1話ではヒロイン役の藤原さくらが、世間ではあまり知られていない障がい「吃音」(きつおん)をリアルに演じていた。

吃音は、言葉をスムーズに話すことが出来ない障がいだ。話すときにつかえたり、言葉の最初の発声に詰まったりする。「あ行が言いにくい」「母音が苦手」など症状の種類や重さはさまざま。成人の1%に見られるというから、決して珍しい障害ではない。

『ラヴソング』の第1話では、電話ができない・お店で注文ができない・職場でコミュニケーションがうまくとれない・周囲に理解されないといった吃音の苦悩を、ヒロイン役の藤原さくらさんがリアルに演じていた。Twitterには「まるで自分みたい」「直視できない」など、自らの経験に重ねてドラマの感想を述べているツイートも見かけた。実は筆者にも吃音があるのだが、過去の辛い記憶を何度も思い出した。それほど彼女の演技はリアルだった。

なお『ラヴソング』の製作には、吃音がありながらも医師として活躍する「吃音ドクター」をはじめ、吃音の自助グループ全国言友会(げんゆうかい)連絡協議会が監修している。吃音の少女を演じる藤原さくらさんも自助グループを訪れているといい、吃音への深い理解がリアルな演技に繋がっているのだろう。

社会に認知されることへの不安も

吃音を扱った映像作品としては、2010年公開の『英国王のスピーチ』がある。2011年にはアカデミー賞を受賞するなど、吃音の認知度向上に一定の役割を果たした。しかし作中で吃音に悩むジョージ6世は「英国王」という肩書きで、どこか遠くの話に感じられたのは否めない。

一方『ラヴソング』では、庶民の吃音をもつ少女が、現実で直面する苦悩が赤裸々に描かれている。遠い世界の話ではないという意味で感情移入しやすく、社会の側からも現実に起きている問題として捉えやすい。しかもフジの月9枠での放送ということもあり、当事者の間では、『ラヴソング』をきっかけに吃音への認知や理解が広がることに期待する声は大きい。

ところが、当事者にはドラマ化に否定的な意見もみられた。社会に認知されることが、新たな差別を生みかねないという不安だ。吃音は見えない障害とも言われている。認知の低さを逆手に取り、症状を努力や工夫でごまかしながら「普通の人」として社会に溶け込んでいる例も多い。吃音が障がいとして広く認知されることで、例えば仕事では成果を出しているのに、吃音を見ぬかれて職業上差別されるのではないかという恐れもあるようだ。

そうした懸念は企業などの社会の側が取り除かねばならない。2016年4月に「障害者差別解消法」が施行された。企業に障がいを理由にした不当な差別の禁止と、障がい者への合理的配慮を求める法律だ。100人に1人の割合で存在する吃音を持つ人にどのような合理的配慮が行えるか、しっかりと考えていく必要があるだろう。月9『ラヴソング』は、吃音がある人とそれを取り巻く社会の双方に大きな変化を与えそうだ。

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